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フォレストベンチ会報「STEP」5月号へ寄稿しました

2013年 5月 19日
フォレストベンチ勉強会の模様

フォレストベンチ勉強会の模様

 さる2月19(火)午後5時から30分間、衆議院第二議員会館会議室において、初めての「全天候フォレストベンチ工法」についての勉強会(公明党復興・防災部会)が開催されました。私も、直前まで東京しごとセンターで「職人塾」のレクチャーを受け、何とか「全天候フォレストベンチ工法」勉強会にやっと間に合う事が出来ました。村井俊治東大名誉教授とお会いしたのも初めてで当日も、プレゼンテーションが終わると羽田空港へ急ぎ帰路につきました。

 その私に、栗原博士より村井名誉教授がプレゼンテーションされた感想を、フォレストベンチ研究会会報である「STEP」に寄稿するように依頼がありました。承諾はしたものの、とんでもないことをお受けしたと後悔しましたが後の祭り。

 本来は、4月号で掲載される予定でしたが、時間を見つけながら推敲を重ね一か月後の5月発行のフォレストベンチ会報に掲載される運びとなりました。

以下、寄稿文を紹介いたします。 

「ガレキ埋立による平成陵の実現を希う一聴衆として」

 いささか旧聞に属するが、今年の2月19日(火)午後5時から30分間、衆議院第二議員会館会議室において、村井会長による「平成陵」に関するプレゼンテーションが実施された。私は、3月議会前の政務調査で茨城県取手市消防本部を訪れた後、全天候フォレストベンチ工法でご縁をいただいた森田実先生の「職人塾」に出席のため千代田区にある東京しごとセンターを訪れて「職人塾」のレクチャーを受け、その後に慣れない地下鉄を乗り継いで、やっとのことで勉強会に間に合ったのです。 

 私は2年前の東日本大震災一週間前に、幸運にも栗原理事に特別講習を受けてフォレストベンチ研究会の会員にさせて頂きました。しかし、研究会会長の村井俊治東大名誉教授とお会いするのは初めてでした。午後5時から30分間という厳しい時間制約の中で、フォレストベンチ工法の名前は初めてという国会議員が、東大名誉教授のお話を聞くとなると、理解できるかどうか怪しいと正直に思ったのです。しかしそれは全くの杞憂で、「フォレストベンチによる森の再生」から「ガレキ埋立による平成陵の建設」までが、立板に水のように聞く者の頭に、すんなり優しく入り込みその要旨は心に強く残りました。 

 村井会長は東日本大震災発生後、何度も被災地に足を運ばれ、そこでの証言を「東日本大震災の教訓―津波から助かった人の話」として上梓されています。将来に残すべき教訓は、生き残った人々から得た実話が最大の教訓だとして、各地で取材して本にされたのです。そして、地震と津波で生じた瓦礫処理が、震災復興の妨げとなっている現状を見かねて、平成陵構築の提案に踏み切ったとのこと。その根底には「東日本大震災で犠牲になられた方々の魂は鎮まってはいない、平成陵の建設によって亡くなられた方々の鎮魂の場を作りたい」(趣意)と語られました。 

 瓦礫で防潮堤を構築する案は、栗原理事が震災の2ヶ月後には図を描いて提案されておりますが、瓦礫を単に積み上げる宮脇案(横浜国大名誉教授)と同じに見えるのか、あるいはコンクリートしか念頭にない行政に阻まれてか、日の目を見ておりません。村井会長はその状況を打破すべく、前方後円墳という日本古来の代表的墳墓の形状で、しかも3.11に因んだ大きな直径で仁徳陵より一段高いものにして、瓦礫の収納を迅速化し復興を推進することが新たな目標です。そこでは、犠牲者を鎮魂すると共に、15段もの階段状平地には記念植樹の大量スペースが確保され、最上部には2万人が一度に集える式典スペースが、いざという時の避難所にも成ります。 

 世界の隅々を見て来られた会長は、特にヨーロッパの各都市で、世界大戦での大量瓦礫が積み上げられ戦災モニュメントとして残っていることや、横浜市の山下公園の地下には関東大震災のときの瓦礫が埋まっていることも紹介されました。今回の瓦礫が、全国の自治体へ受け入れをお願いして遠路を輸送されている無駄にも強い義憤を感じておられます。1㎥あたり数万円の費用を掛けて他の自治体の焼却炉まで運び込んでいますが、被災地に平成陵を設ければ、100億未満の費用なので、1㎥当り千6百円で済むのです。これは、引張り力で土砂や瓦礫を圧縮状態とする手法を編出した栗原理事の試算ですから、実績も豊富で狂いはありません。しかもそれは、瓦礫の持ち込み次第で、3ヶ月もすれば出来上がるスピーディな代物です。この金額を知らされた出席議員や秘書・報道関係者の間から一瞬どよめきが起きました。これだけの国家プロジェクトにしては安すぎる、という驚きだったのでしょう。 

 他の如何なる方法でも、何倍・何十倍と掛かります。会長によると、あるスーパーゼネコンの案だと一千億を優に超えているとのことです。土砂や瓦礫の安定の為に重量物を用いる場合と、引張り力を用いる場合とで、数百倍の差が生じると栗原理事から聞いていましたが、それが如実に現れた結果と直感しました。栗原博士は、森田実先生から天才土木技術者と呼ばれる程で、無駄を省いて本物を作り出す能力は、誰も真似の出来ない境地に達しておられます。これは同じく、森田実先生が提唱される「職人塾」の目指す最たるものでは無いかと実感した次第です。(職人扱いは失礼かと思いましたが、日頃から栗原理事は自分のことを「崖の職人」と言われているので・・・、ご勘弁下さい) 

 それにも増して、誰にも反対出来ない「前方後円墳」で犠牲者を鎮魂するという発想は、測量技術で世界を制覇して来られた村井会長ならではの妙案です。ところが環境省が、瓦礫を盛土として活用することに頑なに反対姿勢を貫いており、国土交通省の太田大臣と言えど如何ともし難いとのこと。これは瓦礫に含まれる(かも知れない)放射線を意識した結果であろうが、他府県へ持込んでの焼却を推進する一方で、被災地で瓦礫による盛土を認めない矛盾を、環境省は後世へどのように説明するつもりだろうか。科学技術の妙案が政治的には通用しない矛盾の一つなのだろうが、村井会長は、平成陵への要請があれば、被災地の何処からでも引き受けます、と意気軒昂である。 

 政治は、選挙民のレベルを超えることが出来ないと言われるように、優れた技術の恩恵に与るのは、それを理解できる大衆のみである。我々がフォレストベンチ工法に傾倒するのは、その志と職人技を愛でて、多くの人と共有したいからである。優れた技術を見分けるには、職人技であるかどうかが一つの尺度となると思う。私は幸運にもこの一日だけで、名人技と職人技との二つに出会うことが出来ました。心から感謝し、フォレストベンチ研究会にお礼を申し上げたいと思います。

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